ジャムジャム王国(仮)

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音楽とは何ぞや

土曜日に更新したばかりですが、何となく書いてみたくなったことがあったので、自分のために書いてみました。








音楽でしか救われない人種がいるらしい。


別に音楽に限った話ではないが、みんながある段階で見切りをつけ、折り合いをつけて、世間でよくいわれている「普通」というものに落ち着いていく。「大人になる」ということかもしれない。
私自身も結構大人になったと思う。


けれどやっぱりそれでは駄目な人もいる。そんな人はとても生きづらいのかもしれない。
私はつらいことが大嫌いなので、そういった種の人間でなくて本当に良かったと思う。


でも、私の心の中に、そういった種の人間に対する拭いがたい憧れがあることを、私は知っている。
一切の妥協無く何かに殉じようとするその苛烈な信仰というか、純愛に、私も身を焦がしてみたいと思ったりもする。
幸か不幸か私には音楽以外にも好きなことがたくさんあり、それらに好き好んで接しながら生きているので、純愛とは程遠い生活を送っている。


それでも、希望的憶測で、もしかしたら自分も大人になりきれない不器用な、だけど純粋な人種かも知れないと夢想することがある。
恐らくそんなことを考えている時点で、そうした人種ではないのだろうけれど。


音楽でしか救われない人種がいる一方で、音楽が呪いになってしまっている人もいると思う。この2つの人種はとても似たように見える。
音楽が好きだということと、音楽が好きだと思い込むことの区別はすごく難しい。思うに、音楽に対する気迫の有無が見分けるポイントかも知れない。


私が今まで見てきた数少ないサンプルだけでは信憑性は皆無に等しいが、音楽が好きな人からはあまり気迫を感じない。逆に音楽が好きだと思い込んでいる人からは、並々ならぬ気迫を感じる。
後者の方が、音楽が呪いになってしまいやすいと思う。


私にとって音楽は純愛なのか、呪いなのか、未だに答えを得ていない。そもそも自分が音楽好きなのかですら、自信を持って返答できない。
もしかしたら、自分にとって音楽が何なのか、その答えを得てしまったらそれきりなのかもしれない。分からないからこそ、なんだかんだで音楽を続けてきたのかもしれない。ただ、音楽は現代に存在する数少ない魔法の一つだとは思う。


少し昔語りをすれば、私は以前ピアノの師匠を持っていた。その師匠は、私が就く以前には、有名な音楽大学でも教えたりしていたそうだが、私はその現場を見たことがない。
何にせよその師のもとで私なりに頑張っていたわけだが、その頃の私にとって、音楽とは常に劣等感と共にあった。


何しろ周りの門下生が皆優秀だったのだ。国内はおろか海外のコンクールに出ては賞をとってくるような人達に囲まれて劣等感を抱くなという方が無理がある。
落ちこぼれだった。劣等生だった。大体そんな門下生の中に、楽譜の読めない人間が混じっていることが摩訶不思議だった。
実際、師からも「今の君には何を言っても分からないから、好きに弾きな」と言われていた。


振り返ってみれば、そんな劣等感を抱きながらもピアノをやめなかったのは不思議なものである。
自分で言うのも何だが、当時の私は結構真面目だった。その方向性が正しかったかどうかは分からないが。
余談ではあるが、この劣等感は今でも持ち続けている。


そんなわけで、真面目に練習をしては劣等感とともにピアノを弾く日々が続いていたのだが、ある日私の師匠が亡くなった。


師匠は、いつか音楽の世界に自分の名を残したいと、プロとして至極まっとうな思いを胸に燃やしていたそうだが、その夢は残念ながら未完成のままとなった。或いは私が無知なだけで、音楽の専門家から見れば名を残すに値する業績があったのかもしれない。


ともかく、私なりに尊敬していた師匠が亡くなって、大袈裟ではあるが私の人生観が変わった。
簡単に言うならば、頑張る人生から頑張らない人生へと路線変更した。
手間暇かけて育てられた大輪のバラはもちろん美しいが、排気ガスでくすんだ街路樹の葉の揺れる様でも美しいと感じることができるんだと感じるようになった。


そんなこんなで師を失ってもだらだらとピアノを続けて今日に至るわけだが、時々、師匠が生きていてずっと師事し続けていたら、或いは私も音楽に対する純愛を得ていたのだろうか、それとも音楽が呪いになっていたのだろうかと考える。


師が亡くなる数ヶ月前に「そろそろ君も僕の言うことが分かるようになってきたから、来年辺りからは細かいこと言っていくよ」と言われた。褒められたことが無かった私にとって、その言葉はとても嬉しかった。師が私に一体どんなことを指摘するつもりだったのか、今となっては知る由もない。


音楽でしか救われない人種がいるらしい。
私はどうなのか。そうなりたい自分も、そうなりたくない自分もいる。ただ私には、ひとつはっきりと、なりたいものがある。


私は魔法使いになりたいんだ。


歴史に名を残さなくてもいい。褒められなくてもいい。私はわたしの体を使って、魔法を紡ぎだしてみたい。
師が残してくれた言葉の中でも、一番心に残っている言葉を大切に胸に抱きながら、私は半人前らしくゆっくりと、魔法使いへの道を歩いていく。


師匠が私に残してくれた言葉。


「僕はね、本当は音楽よりも餃子の方が好きなんだ」


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*Comment

はじめまして 

すごくいい話を聞いて考えさせられたのに最後の一言で笑った。
ナイスカットですね。
ピアノの新作、待ってます。
お体には気をつけてくださいね!
  • posted by ふみはし 
  • URL 
  • 2013.12/11 03:42分 
  • [Edit]

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